オナカイタイ

かれこれ10年ほど前だったろうか。 ぢぢいがまだ現役の社畜だった頃、いつもの習慣で出勤前の早朝に入浴してからソファで放牧された牛みたいにグデ~ッと脱力していた所、何やら腹部にプチ違和感が……。 あり?何だべな?と脇腹の辺りをまさぐってみると、数年前からポコンと出現した脂肪塊みたいなヤツの周辺が不穏な熱を放っているっぽい。 件の脂肪塊はぢぢい世代で例えて言うと銀玉ピストルの玉ぐらい、もっと若い世代に向けて解説するとBB弾みたいな感じのヤツが1個ころんと皮膚下に埋もれていたのだが、これまで痛くも痒くもなかったし、特に有効活用出来そうな存在感もなかったので、宿主としてネグレクト気味に冷遇してきた。 その祟りなのか何なのか、突如としてグレた息子が「おめーなんか、おめーなんか~~!バッキャロ~~!」と家庭内暴力に走るみたいな勢いで、見る見る内にドス黒く腫れ上がって来たのである。 しかも何が何だか良く分からないけれども、頼むから周りの空気も動いてくれるな的な(←多分被害妄想半分)激痛で、独りで声を殺して悶絶していた。 これはヤバいかもしれない……少なくとも命に関わる病ではないとは推察出来るものの(←逆に突然他界したとして、その原因がお腹表面のデキモノでしたとか公表されて爆笑されるぐらいなら、一思いに舌噛んで死なせてくれい!そんな辱めは真っ平だ!と今でも思うし)、とにかくやたら痛い。 意味不明な痛さだ。 年明けの仕事始めの日だった事もあって、電話一本で「休むわ~、じゃあね~♨」って訳にもいかんよなーと、這いつくばるように家を出て会社へと車を走らせた。 「あのね、新年早々申し訳ないんだけどね、お腹がガッツリ腫れててメッチャ痛いから今日休まして貰います。 見る?」 いらんわ!さっさと病院行け!と叱られて追い出された。 何だよ~……せっかく歯を食いしばって出て来たんだぞ、一目ぐらい見たって良いぢゃねーか。 

大学病院の皮膚科に行ってペロンとお腹を見せたら「うおっ! こりゃ痛いわー!」とドン引きされて、即入院させられた。 化膿性粉瘤(かのうせいふんりゅう)だと言う。 ホレ見てみい! 会社の運行管理者、今になって見てみたいとか言っても見せてやらんからな!(←言わねーよ) そう言えば昔の楳図かずおの漫画にも「人面瘡」って、身体の腫れ物が人の顔みたいになって喋り始めて、理不尽に悪態ついたりメシ食わせと騒いだりする不気味なストーリーのやつがあったけど、正にあんな感じに腫れ上がっていたのである。 この腫れ物にいつ目鼻が出現するのかとドキドキしながら観察していたが、結局何も起こらなかった。 然したる処置もないままに入院は一週間に及び、途中で数回インターンとおぼしき若者7~8人を引き連れた先生様が回診に訪れて、患部を晒し物にされたりなんかする。 猛烈に恥ずかしい。。。 患部がチ〇コでなかったのがせめてもの幸いだったとは言え、年明け早々何故にこんな辱めを受けねばならぬのか。 入院から数日後、麻酔して患部を切開する事を告げられたのだが、「一応麻酔注射は打つけど、化膿してるからねぇ……多分効かないんだよねぇ」ちょちょちょちょちょっと待て!! 何でそーゆー事言うかね??? たちまち全身非常厳戒態勢が発令されて、ヤマアラシのトゲトゲが逆立った。 トゲないけど。 気持ちだけトゲトゲである。 麻酔効かないなら効かないなりに、何か、こう……ないの? フォロー的な、何か、こう?……(←語彙力ゼロ)。 「痛いと思うけど我慢してねー♨」 あはは、あはははー、要するにフォローもクソもねーよっていう事ですね分かりました~~。 あざ~す♨  し、死んでやる……。

アサルトライフルみたいなゴツい注射を目撃した時点でぢぢいは気絶してたので、切開の記憶も飛んでいる。 ただ若くて綺麗な看護師のお姉さん2人掛かりで、手足を抑え込んでくれていたのが嬉しかった❤(←地獄のような状況の中にあっても、バカはやっぱりバカである)。 麻酔が効かなくても切開そのものは5mm程度なので、イテテ!程度で終わるのだが、問題は化膿した部位の内容物をその傷口から全て絞り出さなければならないという点である。 間抜けな例えだが、推定年齢40~50歳のお医者さんの先生様が、全力投球で人の腹をつねって来る光景を想像してみて欲しい。 「つねる」という子供の喧嘩みたいな地味な攻撃手段の割に、両手を使って全力でつねられるとそりゃあもう全身脂汗モンの激痛で、ましてや数分前まで触られるのも勘弁してくれって部位であれば尚更であろう。 申し訳ないが至急もう一人若くて綺麗な看護師のお姉さんに追加支援を要請して、主に下半身を中心に抑え込んで欲しいと熱望したのも当然の流れである(←意味不明)。

そんなこんなで、結局一週間の入院で十数万円の費用をむしり取られて騒動は収束した。 あんな災難はもう沢山だと思っていたのだが、何たる事か、先月の末にお腹の別の場所にもう一個残っていた粉瘤が腫れ始めた。 再びあの悪夢が蘇って来て恐怖に駆られたぢぢいだったが、前回ほどの腫れや痛みもなかったので近場のクリニックに受診しに行ってみた。 飲み薬と軟膏を処方されただけで、あっさりと帰宅。 やや痛みはあったものの、バイトに穴を空ける事もなく推移して5日後に再度通院した際には、やはりあっさりと切開されて前回同様全力でツネツネされて脂汗かいた(涙)。 前回と違っていたのは看護師さんが琴奨菊タイプの太ましいオバさん一人しかいなかった為、抑え込みは頑強に固辞して自力で手足を踏ん張って耐え抜いた事ぐらいである(笑)。 いや、正確に言えばもう一点、治療が通院2回、薬を含めた治療費が四千円程度で済んだ事も……。 前回の治療は一体何だったのか? 〇大病院、金返せ!(笑)